シンガーソングライターを辞めて久しい私ですが、REASNOTを創刊して以降、ありがたいことに人前で歌わせていただく機会が増えました。
かつてはどうあがいても手の届かなかったステージに立てるのに、約10年前に作った曲とカバー曲しか歌えないのでは、さすがに申し訳ありません。
せっかくなので、毎年1曲くらいは、新曲を用意しようと決めました。
本日は、2022年に制作・発表した『AnseRustica』をご紹介します。
役得そのものな前置き
私がシンガーソングライターを辞めた大きな理由の一つが、「曲作りが苦痛すぎる」ということでした。
歌詞はいくらでも書けるけど、メロディは一ミリも思いつかない。音楽理論などを一通り勉強して、それっぽくコードを並べて作曲できるようになっても、面白さを感じられなかったのです。残念。
2019年の『紅桜歌』までは、頑張って作詞作曲編曲を全部ひとりで頑張ったのですが、「もう無理」ってなりました。
20年は、サビのメロディだけ自分で作って、残りは、インターネットを通じて知り合ったemigliaさんに作編曲をお願いしました。出来上がった『星降る夜の約束』のイントロや1番のメロディは、自分では到底思いつかないもので、大満足でした。
21年は、「そろそろ新曲ほしいな」と思っていたころ、以前取材したShiny’sの野村さんが「作曲の仕事やりたいです」と呟いておられるのを発見して、「ぜひに」とお願いしました。
曲調などをリクエストして、ふんわり書いたぽえむをお渡ししたところ、野村さんが「サヨナラ、運命」というワードを気に入ってくださいました。そこを軸に曲と歌詞を整えて『サヨナラ、運命。』が完成しました。
ここで私は思いました。
「REASNOTの活動を通じて、音楽関係の知り合いが増えてきたし、せっかくなら『作曲したい』と言ってくださる方に仕事をお願いしたい」と。
*
22年8月、再び「そろそろ新曲ほしいな」と思い始めたころ、Twitterで「【ゆる募】作曲提供してくれる方いませんか」と呟きました。
想像以上の反響があり、数名からDMをいただきました。曲調や納品方法、謝礼などの条件について話し合い、最終的にお仕事を依頼することにしたのが、中山大之さんです。
色々と理由はありますが、とりわけ、中山さんが「こんな感じはどうですか?」と、送ってくださったデモ音源が素敵だったのです。
そもそも中山さんの曲やピアノは何度も聴いていて、ジャジーでオシャレな雰囲気がいいなと思っていました。絶対に今の私の引き出しにはない曲を書いてくださるだろうと、わくわくしながら依頼しました。
暮夜の夢から、未明の願いに
【ゆる募】をした時点で、ふんわりぽえむを書いていました。タイトルは『夢花火』。幸せラヴソングの予定でした。
しかし、中山さんとやりとりをしているうちに、ガラッと変わりました。笑
自分の心境の変化もありますし、「もっとこうした方が良くなるんじゃないか」とアドバイスしていただいた内容への納得もあります。
何より、中山さんから送られてきたメロディを聴いて、するするっと言葉が出てきたんですよね。「暁の渚は煌めいて」って。
完全に朝やん。夜やないやん。花火どこいった。笑
しかしこれがしっくりきてしまいまして。文字だと、中二病はなはだしい一節なのですが、メロディがつくとシンプルにロマンティックなのですよね。
これも共作の醍醐味かな!と思い、突き進みました。
鳥のような人が好き
Anser(アンセル)は、ラテン語で雁(ガン)という渡り鳥を意味します。Rustica(ルスティカ)は、同じく渡り鳥であるツバメの学名です。
このふたつをくっつけて、今回の楽曲に『AnseRustica(アンセルスティカ)』というタイトルをつけました。