プロドラマーとして、サポート演奏や音楽講師など、多方面で活躍している阿部実(あべ・みのる)。彼が主宰するドラム教室のレッスン内容や、今後に思い描く夢を聞いた。
A.B.M.Drums Schoolについて
様々な音楽学校や教室で講師を務めてきた阿部は、2022年に、自身が主宰するドラム教室『A.B.M.Drums School』を開業した。
「普通のドラムレッスンって、とても地味なんです。メトロノームに合わせて同じフレーズを何回も繰り返したり、CDやYouTubeの音源を流しながら演奏したり。プロ志望の人や『同じことを繰り返しコツコツと』が苦にならない人はいいんですが、そうでない人は『つまらない』ってなりがちです」
また初心者にとって、一定のリズム(テンポ)でドラムを叩くことは難しい。演奏するうちに、しばしば音源とズレていってしまうが、それに気づける人と気付けない人がいる。
「講師は『ズレてるよ』って注意するけど、生徒さんは『えっ?どこが?』ってなって、直せなくて、レッスン進行が停滞することがしばしばあります。そういったことが積み重なって、レッスンそのものが嫌になって、辞めてしまう人も多いんですよね。どうしたらいいのか悩みました」
より多くの人にドラムレッスンを楽しんでもらう方法を模索した結果、「僕がコード楽器を弾けたらいいんじゃないか」と思いついた。
「生演奏なら、生徒さんのドラムのリズムが多少乱れたとしても合わせてあげることができます。試しにギターの簡単なコードを覚えて、レッスンをしてみたら、手応えがありました」

さらに「歌もあれば、バンド演奏のようなレッスンにできる」と考えた。
「まずはミスチルの曲を練習して、弾き語りできるようにしました。ドラムの楽譜を自分で書いて、生徒さんに渡して、『一緒にやってみようよ』と。当時所属していた音楽教室に許可をもらって、自分なりに工夫していきました」
ギターと歌は、独学で習得した。
「インターネットでコードを調べて弾いてみて、つまずいたら周りにはプロギタリストの友達がたくさんいるわけですから質問して、って感じです。歌は高校生のころ、合唱部の手伝いをしていたくらいですね。あとは、みなさんと同じくカラオケ程度です」
独自のスタイルでのレッスンは好評を博し、少しずつ生徒が増え、継続率も上がっていった。コロナ禍も越えたところで、いよいよ開業に踏み切った。
「音楽の楽しみ方は人それぞれです。プロを目指して上達したいって人も、趣味として練習を続けたいって人も、まずは気軽に体験レッスンを受けに来てください」
ドラムやカホンに興味のある人は、彼の音楽教室の門を叩いてみてはいかがだろうか。
よりよい作品づくりに貢献したい
レコーディングの際、ボーカルのリズムや音程チェックはもちろん、歌い方の方向性などを確認・提案する作業を『ボーカルディレクション』と呼ぶ。
「実は数年前から、幾つかの作品でディレクションさせていただいています。たとえば、楽曲の後半に盛り上がりを持って行きたいのに、出しやすい音域だからと最初からフルパワーで歌ったら、メリハリをつけられませんよね。そういう時は『ここまでは抑えて歌おう』とアドバイスすることもあります。ブレスの位置や言葉の繋ぎ方なども、アーティストさんの意向を含めて相談しながら、より良い歌い方を一緒に模索します」
それはまるで、商業誌に漫画を連載する作家が、編集者と二人三脚で作品のクオリティを上げていくような作業だ。第三者の目線が加わることで、改善される部分は多い。
「高校生のころ、自分の代の男子吹奏楽部員が多かったこともあり、合唱部の先生に頼まれて、何度か混声合唱に参加したんです。練習中に『その歌い方は自分は気持ちよく歌っているかもしれないけど、聞いている方は全然気持ち良くないぞ』とか、『声を響かせるために子音が消えていて、歌詞が聞き取れなくなっている』といった指摘を受けました。そういうのって、自分じゃ気づけないんですよね」
その他にも、プロのボーカルレコーディングを見学できる機会が多々あり、その経験が今に生かされているという。
「よりよい作品づくりに貢献したいな、という気持ちで頑張っています」
他にも、ドラム演奏と同時に、ライブの映像ディレクターを兼任することもある。
「プロのミュージシャンのライブに行くと、大きな会場に幾つもモニターがあって、ずっと映像が流れていますよね。あれをそのままやるっていうのは難しくても、ちょっとしたアニメーションを作ったり、MVを流したりするくらいなら、僕にもできそうだと思ったことがきっかけでした」
ゼロからプレゼンテーションソフトの使い方を勉強した。
「もちろん本職の人には敵いませんが、普段の演奏+αとして僕なりに楽しんでやれています。これからもサポートしてるアーティストさんのライブや作品が少しでも良いものになるのであれば、色々とやってみたいです」
彼の力が必要な人は、ぜひHPやSNSから問い合わせをしてみてほしい。
文:紅葉
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