Gt.&Vo.wanのバンドプロジェクト、ワンダフル放送局。幼いころは詩吟を習い、中学3年生からドラマーとしてバンドで演奏するようになった彼は、大学生から本格的な音楽活動を開始。2019年秋にワンダフル放送局を結成し、25年春から約半年の休止を経て、Phase-2として活動再開。その辿ってきた道のりを聞くとともに、創作者としての理想に迫った。
福井から大阪へ、東京から全国へ
福井県出身のwanは、小学3年生から中学2年生ごろまで、詩吟を習っていた。
「もともと祖父母が詩吟をやってて、母が始めて、僕もって流れでした。和歌などに節をつけて歌っていく、演歌に近い芸能ですね。詩吟を通じて学んだことは、今の音楽活動にも生かされている気がします」
転機が訪れたのは、中学3年生の時だ。
「友達がブルーハーツを教えてくれて、一緒に演奏しようって話になりました。たまたま実家にドラムがあって、自由に触れる環境だったので、最初はドラマーとしてバンドに参加しました」
高校へ進学すると、さらに幅広い音楽を聴くようになり、Mr.ChildrenやB’zなどの楽曲をカバーして楽しんだ。
「僕の高校には軽音部がありませんでした。部活には入らず、友達とバンドを組んで、文化祭に向けて練習していました。高2くらいからギターを触るようになって、色んな曲をカバーしながら、独学で弾き方を覚えました」
卒業後は、滋賀県の大学に進学した。
「もっと本格的な音楽活動をしたくなって、オリジナル曲を作り始めました。ライブハウスに立ったのは大学1年生か2年生の時、オープンマイクっていう『誰でも気軽に遊びに来てよ』って感じのイベントが最初でした」
同時期に路上でのライブ活動も開始。しばしば京都へ足を運び、ギターを弾き語った。
「大学4年生の春になって、周りが就職活動を始めた時、一応、僕も説明会に行ってみました。でも『僕みたいな人間が行く場所じゃないな』と思って、すぐ辞めました。大学の教授との面談で『音楽やります』と宣言しました」
しかし、ソロのシンガーソングライターとしての活動には、限界を感じていた。
「曲を作ったり、ライブをやったり、色々してみたけど、売れ筋が見えなかったんです。『このまま続けてもダメだ』と思いました。自分のやっている音楽がバンドサウンドに近かったのもあって、バンドを組みたいと考えるようになりました」

大学卒業後、インターネットを通じてメンバー募集を行い、2019年秋にワンダフル放送局を結成。
「結成時は、僕がギターボーカル、あとドラムとベースっていう編成でした。名前は『~団』とか『~倶楽部』みたいにしたくて、『放送局』ってつけてるバンドが他になかったので選びました。良いポップスをやってそうなバンドっぽさ、カッコよすぎず、覚えやすくて、エゴサしたら一発で出てきて、ワンダホって略せるところも気に入っています」
しかし、20年初頭からコロナ禍が世界を襲った。
「コロナ禍中に結成してたら、デフォルトが『できない状態』なので、それなりにやりようがあったと思うんですけど。僕がバンドを始めた瞬間は違ったので、切り替えが難しかったです」
手探りながらも、フットワークの軽さを生かして活動を続けた。
「コロナ禍の最初のころは、ライブを直前にキャンセルするアーティストがたくさんいました。学校からの制約で出れなくなりました、とか。その穴埋めをしまくりました。場数を踏みたい時期だったので、ある意味、ありがたかったです。ライブハウスさんから連絡がきたら、どんどん出演しました」
20年4月18日に1st mini album『ワンダフル放送局』をリリース。5月には、リモートで制作したMVを発表した。さらに同年11月15日に2nd EP『ドキドキしようぜ。ワクワクしようぜ。』、21年12月8日に完全自主制作1st album『ホボA(エエ)面』を発売した。
22年ごろにwanは上京し、活動拠点を東京に移した。
「僕の考えとして、日本ちっちゃい説があって。『どこに行っても結局一緒なら、東京にいたほうがよくね』っていうノリです。メンバーは大阪に残っていたので、遠距離バンドをやっていました」
22年6月18日に3rd EP『NINGEN』、23年6月21日に4th EP『青春みたいだ』を制作。24年7月3日には、5th EP『君とロックを聴きたい』をデジタルリリースした。
「作っている曲、発表したい曲はまだまだありましたが、24年の終わりごろにメンバーが抜けることになりました。3月30日に僕ら主催のサーキットイベントをやって、そこを集大成としてPhase-1を終了することにしました」
25年春から半年ほど活動を休止し、25年10月1日から、Phase-2として再開した。
普遍的なテーマに、独自の視点で切り込んでいく楽曲群
「僕は勉強も、練習も嫌いです。音楽理論とか関係なく、パッションのままに曲を作り始めました」と語るwan。
「リズム先行かもしれないし、メロディな気もする。歌詞も全部いっぺんに出来るような曲が、自分の中でしっくりくることが多いですね」
これまでに発表してきたオリジナル曲の総数は50を超える。現在の代表作は『チェーンソング』だ。
「チェーンメールってありますよね。『このメールを読んだら次の人に転送してください』ってやつ。そこから着想を得て、『音楽だったら面白いな』ってところから作り始めました」
作られたばかりの音楽は、作曲者だけが知っている状態だ。ライブハウスで演奏したり、インターネットを通じて配信したりして、誰かに聴いてもらうことになる。
「聴き手が『この曲よかったよ』と拡散してくれて、僕が直接聴かせた人以外にも、自分の歌が届いていく。その連鎖って、チェーンメールどころじゃない影響力があるはずだ、って思いを込めました」
チェーンメールといえば、ホラー映画で怪異を呼び出すために使われたり、誰かの悪口を拡散したりと、ネガティブなイメージがつきまとう。しかしwanの手にかかると「新鮮な感情のバトンを繋いでほしい」という、明るく爽やかなメッセージソングの題材となる。
「僕は捻くれているので、誰もが触れたことのあるテーマを、新しい切り口で切ってみたいんですよね。悪いイメージがありがちなものは良くしたい。コミカルさ、面白さが作品を通して伝わったらいいかな、と思っています」
2025年10月1日にリリースした『いい大人』も、彼らしい皮肉が効いた作品になっている。
「『いい大人』って嫌な文脈で使われがちですよね。『もう、いい大人なんだから』みたいな。言葉では『いい』なのに。だから『こっちは、よい大人になりますよ』と言い返してみた曲です」
キャッチーな音と言葉で紡がれる楽曲群を、ぜひ一度聴いてみてほしい。
どんな境遇の人でも感動させられる音楽を届けたい
2025年10月1日の活動再開以降、楽曲の制作や演奏はもちろんデザイン、プロモーションまで全て、wan一人で運営している。
「演奏面は、サポートしてくれているメンバーが非常に優秀なので、しばらくこのままでいいかな。一人になったからこそ、バンドを解散させる必要もないし。ストックというか、世に出したい楽曲がまだまだたくさんあるので、やめられないですね」
26年3月には、毎年恒例となっている『ササレの日』という主催イベントを行う。
「3月2日は東京の下北沢MOSAiC、30日は心斎橋のLIVE HOUSE Pangeaで行います。22年に企画した時、たまたま30日が空いてて、語呂合わせで名前を決めたイベントですが、僕らの『刺さってほしい』ってコンセプトにドンピシャなので続けています。ぜひ、遊びに来てください」
ライブハウスへの出演に加えて、路上でも演奏を行っている。
「決まった場所はありませんが、東京だと新宿、渋谷とかかな。人に歌を聴いてもらう場所として、路上がいちばんしっくりきます」
歌いたいと思った時、ふらっと歌いに行くようにしている。
「一ヶ月毎日路上をしたり、『一ヶ月分の生活費を路上で賄えるのか』ってチャレンジをしたこともあります。ライブハウスみたいにノルマはないし、好き放題歌えて、不特定多数の方に聴いてもらえるのがデカいんですよね」
飄々としている彼に「5年後、10年後、どんな自分になっていたいですか?」と聞いてみた。
「健やかに生きていたいです。もっとカッコいいことを言えたらいいのかもしれないけど、現実的なのかな。音楽を続けていられたらいいな、というのはあります。音楽一本で生活していけたら、本望です」
リスペクトしている存在は、ウォルト・ディズニーだ。
「アニメ、ショー、映画、様々な意味で『人に何かを見せる』世界、エンターテイメントの頂点ですよね。彼の生き様とか、やり方は、一番見習うべきだと思っています。なによりディズニーの曲は、メロディが圧倒的にいいんです。歌詞が英語だろうと、和訳されていようと、そもそもインストだろうと、関係ないくらい音楽的に素晴らしい。どうやったらこんなのができるんだ、と尊敬しています」
wanは、どんな境遇の人でも感動させられる音楽を作りたいと考えている。
「やさぐれてる人が聴いても、幸せな人が聴いても、めっちゃ心に来るのが良い音楽だと僕は思っているので。まずは今年のササレの日に向けて頑張りつつ、曲を作って、ライブしていきたいです」
彼がどんなエンターテイメントを見せていってくれるのか、楽しみだ。
文:紅葉
INFORMATION
2026.3.2(月) 開場 18:00 / 開演 18:30
「ササレの日2026 東京」
[会場] 下北沢MOSAiC(東京都世田谷区北沢2-2-14)
[料金] 一般:3,000円 / U22 先着40名:無料 / U22:2,000円(いずれも別途1ドリンク代)
[出演] ワンダフル放送局、Seskimo、サウルス、ヨルノピクニック、アメリカンヴィンテージガール
[詳細 / 購入] https://livepocket.jp/e/5qocz
2026.3.30(月) 開場 / 開演 TBA
「ササレの日2026 大阪」
[会場] Live House Pangea(大阪府大阪市中央区西心斎橋2-10-34)
[料金] 一般:3,000円 / U22 先着40名:無料 / U22:2,000円(いずれも別途1ドリンク代)
[出演] ワンダフル放送局、Cupid tem、ドロップワンドル、and more…
[詳細 / 購入] https://livepocket.jp/e/2t9fe
最新曲『プラシーボ』、2026年1月21日にデジタルリリース!

◎ワンダフル放送局 公式ページ
