エムズレコーズ所属のシンガーソングライター、はまだえみ。彼女の音楽が描く世界観や、そのバックボーンまで、深く掘り下げていきたいと思う。
30歳を超えて音楽活動を始めるまでのはまだえみ
はまだが音楽に目覚めたのは小学生のころだった。
「幼いころから歌うことが好きで、親戚の集まりなどで歌っていました。小学生のころ、たまたま、テレビでクラシックピアニストの女性を見て『ピアノを弾いている女性ってカッコ良いな』と強く思いました」。
早速クラシックピアノを習いはじめ、ピアニストとして世界で活躍することを夢見た。しかし両親の離婚を機に、諦めざるを得なくなる。
「父が借金を残して出て行ったんです。誇張ではなく、本当にお金がなくて、そこらへんの草を食べるような生活でした。『小学校を出たら働きたい』と訴えていたくらいです。当然、習い事は続けられませんでした」。
幼いなりに本気で就職を希望していたはまだだが、母親の『高校までは出てほしい』という意向に沿って中学校へ進学した。
世はバンドブームの真っただ中にあった。
「チェッカーズの音楽を聴いて、ポップスに興味を持ちました。そこからジャニーズやHOUND DOGにハマって。ラジオを聴きながら受験勉強している最中に、流れてきた大友康平のシャウトに心を突き抜かれました。今でも好きなアーティストです」。
クラシックではなくても、軽音楽でも『表現』はできる。そう感じた彼女はどんどんポップスやロックに惹かれていく。中学、高校では吹奏楽部に所属してパーカッションを楽しんだ。
高校卒業後は就職し、上京。音楽のプロを目指すというようなモチベーションはなかったものの、その愛は変わらず、しばしばカラオケなどで歌声を披露していた。
数年間働いたのち、結婚して専業主婦になったが、諸事情によって離婚。これが音楽活動を始めるきっかけとなった。
「再就職した先で出会った方に歌を褒めてもらって、音楽事務所のオーディションを紹介してもらったんです」。
当時、彼女の年齢は30を超えており、『音楽のプロを目指す』という選択肢はまったく頭になかった。だが、他人から称賛されたことで『歌手になる』という夢が急に現実味を帯びて迫ってきたという。
「このオーディションがラストチャンスかもしれない!」
はまだは背水の陣で臨み、見事、現在所属するレコード会社から合格を勝ち取ったのだった。
グラミー賞を取りたい。諦めるには早くないですか?
2009年にアーティスト活動をスタートし、11年には1stシングル『自転車/cw Mama』をリリースしたはまだ。現在は自由が丘GranCertoや、下北沢周辺のライブハウスを中心に、月2本以上のペースでライブ活動をしている。
「大人になってから音楽を始めたこともあって、デビュー当初はなかなか自分の殻を破れずにいました。憧れと、自分にふさわしい音楽の区別がつかなかったというか。他のアーティストのモノマネばかりしていました」。
そんな彼女を見かねたプロデューサーの提案で、14年7月から2年半の間、架空のアーティスト『ダーハマ』になりきって活動する。
「ダーハマはできの悪い、ダメな男の人。けれど自分では『みんな恐れをなして俺に近づかないんだ』って勘違いしているアーティストという設定です。それまでの私とはかけ離れた存在でした」。
荒療治とも言えるダーハマ期を経て、自分だけが描ける世界を試行錯誤。行きついた先が『歌謡曲』であった。
「美空ひばりさんとかテレサテンさんとか、『お母さん世代を喜ばせる歌』っていうのが一番わかりやすい目標になるなと思ったんです」。
現在までに作った曲は100曲ほど。およそ一ヶ月に一曲のペースでレパートリーを増やしているという。
彼女のソングライティングにおいて、特筆すべきポイントは『エグみ』だ。ほとんど実体験に基づいて書いたものだという。
「エロい歌や不倫の歌、元彼のことを歌った歌。様々ですが、とにかくエグいです。その中に、理想とか希望とかを織り込んだりします」。
はまだのライブ映像を編集したものが幾つかYouTubeに上がっている。貧乏だった幼少期や、結婚、離婚など様々な人生経験を積んできた彼女だからこそ歌える歌ばかりだ。是非とも聴いていただきたい。
現在、ライブ活動だけではなくMixChannel(ミックスチャンネル)での配信も意欲的に行っているはまだ。
「配信をやっているのって、若い人が多いじゃないですか。そこで活躍して『あの人がこのくらいできるなら、自分ももっと冒険できるじゃん』とか、『大人になるのも悪くないな』って思ってもらえたら嬉しいですね。元々ラジオが好きですし、いつか自分の番組を持ってみたいです」。
はまだがアーティスト活動を開始してからまもなく10年が経つ。今後の目標を訊くと、「まずはCDを出すことです。今の活動スタイルになってから、一枚も出していないので、名刺になるものを出したいです。事務所から『CDを出そう』と声をかけられるように頑張ります」と意気込む。
続けて、壮大な夢を語ってくれた。
「事務所入った時から一貫して変わらないのは、『グラミー賞を取りたい』ということです。周りから『もう無理だ』って言われることもあるけれど、諦め切るには早いと思うんです。人生何があるかわかりませんし」。
あっけにとられる筆者と編者に対し、彼女は「受賞を目指す過程として、紅白歌合戦にも出たいです」と茶目っ気を見せて付け加えた。
いつまでも、これからもひたむきな彼女の姿に筆者も勇気づけられた。今後の彼女の活躍が楽しみだ。
text:Tsubasa Suzuki edit:Momiji
INFORMATION
2020.1.12(Sun) open 18:15 / start 18:30
大人女子会 vol.16
[会場] 自由が丘GranCerto(目黒区自由が丘1-12-4 2F)
[出演] はまだえみ 心音優 松野里枝 NOZ tommy 碧蓮
[料金] ¥2,500+1drink