ピアノ弾き語りを中心に活躍しているシンガーソングライター、藍風(あいかぜ)くじら。彼女の代表曲にまつわる思い出や、音楽活動をするうえで大切にしていることについて聞いた。
好きなことを好きなようにやっていく
コロナ禍においても、マイペースにライブハウスへの出演を続けている藍風くじら。2021年5月28日には誕生日ワンマンライブの開催を予定している。
毎月第一金曜日には、Imix Internet Radio Stationより『藍風くじらのくじらじお』を配信。藍風くじらの趣味に関してのフリートークコーナーと、占いコーナーの二本立ての番組だ。
「私は話すことが好きなので、ついつい喋りすぎちゃうんですよね。『ラジオをやれば、このくらいの時間でこのくらい喋るって感覚が身につくよ』とアドバイスをいただいて、09年ごろから番組を始めました」。
また、毎週火曜日には、TwitCastingで『足(フット)ラジオ』を音楽仲間の「ひねくれ㋮」と占い師仲間の「AMOR(アモル)」の3人で配信している。
元はYouTubeでの配信だったが、コロナ禍からTwitCastingでの配信に変更。 頑張っている人の応援コーナーやゲストを招いてのトークコーナー、占いコーナー、生ライブなど、色々な試みを行っている番組だ。
さらに20年8月から、ほぼ毎日SHOWROOMでの配信ライブを行っている。
「コロナをきっかけに、今できることをやろう、と思って始めました。普通のピアノ弾き語りだけでなく、木に登って唄ったり、曲の途中で殺陣をやったり、手話を練習したりしています。もっと工夫していきたいですね」。

ソロ活動だけでなく、参加中の3つのバンドでの活動にも思いを馳せる。
「ひとつは私のオリジナル曲を演奏するバンド。ふたつめは旦那のバンドで、私はドラム担当。もうひとつはカバーバンドで、ボーカルをしています。ピンクレディーを歌って踊ったりするんですよ。もう少しコロナが落ち着いたら、再開したいですね」。
音楽活動を開始して10年以上経つが、やりたいことは尽きない。
「今、紙芝居の楽曲の第二弾を計画中です。仲のいいアーティストさんと合作した曲のレコーディングや、『セイレーン』という楽曲のMVを制作する企画も進んでいます。もっと色んな人とコラボをしていきたいです」。
占いなどの特技や好きなものを、積極的に音楽活動へ活かしたいと語る。
「私は生き物のなかでも特に虫が好きで、虫のことを語るための専用のSNSアカウントを持っているくらいです。今は、コガネムシとカナブンの違いを唄った曲を作っています。この二種類は、食べ物が違うんですよ」。
彼女の好奇心と行動力は、とどまるところを知らない。
「周りには『あなたはどんなヒトなんですか?』と思われているかもしれませんね。でも、これからも心が赴くままに、好きなことを好きなようにやっていきたいです」。
次はどんな展開を見せてくれるのか、目が離せない。
唄うことで、誰かと繋がり続けたい
藍風は、これまでに約40曲のオリジナル曲を作ってきた。
「唄うと気分が上がって元気になります。唄わずにいると落ち込みます。その代わり、落ち込んでいるときや回復していくとき、メロディと歌詞が一気に下りてきて、曲ができます」。
かつては漫画家を目指していたこともあり、漫画からインスピレーションを得て楽曲を制作することもある。
「たとえば『産声』は『天元突破グレンラガン』の影響を受けています」。

そんな彼女の代表曲は、紙芝居とともに唄う『くじらいぬ』だ。
制作のきっかけは、イラストレーターをしている実妹の一言だった。
「『絵本を描くためにキャラクターを作ったけど、ストーリーが思い浮かばない。考えてくれないか』って頼まれたんです。まだ私が音楽活動を本格化させる前、『藍風くじら』という名前すら使っていなかった、2008年ごろのことでした」。
妹から渡された四コマ漫画には、大きな口と鋭い牙、犬のような耳と尻尾を持ち、不気味さと可愛らしさを兼ね備えたキャラクターが描かれていた。
「くじらいぬは生き物を食べるけれど、殺さず、おなかのなかに入れるだけ。入った生き物は、またいつでも出てこられるんです」。
簡単な設定と四コマ漫画を受け取ったものの、忙しくなった藍風には、ストーリーを練る余裕がなかった。しかし09年の夏休み、福島県にある祖父母の家に帰省していたとき、ふいにアイディアが降りてきた。
「犬の散歩をしていたら『黒い毛並み、大きな口』っていう唄い出しのフレーズが浮かんだんです。『これいいかも!』となって、一気に仕上げました。妹に聞かせたら、すぐにクレヨンで絵を描いてくれたんですよ」。
元々の目的だった絵本が完成したのち、藍風のライブでも披露するようになった。
「最初は、絵本を拡大コピーして、ぺらぺらとめくるだけでした。それを見た音楽仲間が、専用の木枠を作ってくれて、今の紙芝居屋さんのようなスタイルになったんです。ありがたいことです」。
他にも、思い出深い楽曲の一つとして『夜空を見上げれば』を挙げる。
「13年ごろ、左耳だけ半音下がって聞こえるようになって、病院へ行ったら『メニエール病』と診断されました。周りの音がすべて不協和音に聞こえるし、耳鳴りと閉塞感もあって、辛かったです」。
そんなとき、一人の女性からのメッセージに救われた。
「ずっと前から私のライブを見に来てくれている方です。彼女は聴覚障害を患っているんですが、『くじらいぬ』の紙芝居をきっかけに、私に興味を持ってくださいました。耳は聞こえないけれど、音楽が好きで、自分でも手話ダンスをされています。
そんな彼女が、私のメニエール病のことを知って、元気づけようと詩を書いて送ってくれたんです。それに曲を付けたのが『夜空を見上げれば』。ライブでは、音源と手話で唄っています」。

多くの人との関わりのなかで育まれ、自身の代表曲にまでなった『くじらいぬ』。ファンとのあたたかい交流のなかで誕生した『夜空を見上げれば』。
この2曲に限らず、全てのオリジナル曲に、誰かとの思い出がある。
「私は人と繋がるために唄っているし、繋がりによってまた新しい歌ができる。歌が歌を呼んでくれる。これからも、そういう風に活動を続けていきたいと思っています」。
彼女にとって、楽曲は、子どものようなものだ。
「自分が産んだとしても、その子は私のものじゃなくて、別の人間です。意図しない部分があって当然ですよね。楽曲も同じで、それぞれに色んなひとの遺伝子が組み込まれています。
場合によっては『あんまり好きじゃないな』ってフレーズができることもあるけれど、唄っているうちに良さに気づいたり、好きだといってくれる人が現れて、新しい繋がりができたり。そうすると愛おしくなります」。
『藍風くじら』という名前にも、「人と繋がりたい」という思いがこめられている。
「子どものころから『歌手にはならないぞ』と決めていたくせに、『もし私が歌手になるなら「くじら」って名前がいい』と思っていました。くじらは、コミュニケーションをとるために歌う動物のなかで最も大きくて、その声は地球の裏側まで届くんですよ。私も、唄うことで他者とコミュニケーションをとりたい。繋がっていきたいんです」。
彼女がこれからどんな人と出逢い、どんな唄を紡いでいくのか、楽しみだ。
text:momiji
INFORMATION
2021.05.28(Fri) open 17:00 / start 17:30
『くじら物語』vol.2
[会場] 真昼の月夜の太陽(東京都新宿区大久保2-6-16 平安ビルB1F)
[前売/当日] ¥2,500+1drink ※会場30名限定
[有料配信] ¥1,500(Twitcastingにて販売) ※6/11(日)まで購入可能
藍風くじらのくじらじお(毎月第一金曜日配信)
http://came-on.com/radiostation/
毎朝くじらっきー占い(毎朝6:30~6:45配信)
https://showroom-live.com/0849b4603829
足ラジオ(毎週火曜日配信)
https://twitcasting.tv/ashiradio