シンガーソングライター、バンドマンとして活動している犬塚(いぬづか)モブ。彼の代表的な作品や、楽曲制作へのこだわりを聴いた。
つながりを武器にする
犬塚は、音楽を通じて人と出会い、コミュニケーションを取ってきた。
「最近は、SNSで知り合った子たちと、東京でオフ会をしてます。福島や愛知、長野、茨城や北海道など、全国から集まるんですよ。バックボーンの違う人たちが音楽について語ったり、遊んだり、アマチュアもプロも入り混じって、お互いに刺激を受けています。僕が上京したら、もっと開催の頻度を上げたいですね」。
そんな彼の人脈が結実した作品の一つが、2022年10月23日にYouTubeで公開したMV『雨上がり、快晴の空』だ。
「昔のバンドでの知り合いとか、友人の紹介で繋がった人とか、あちこちに声をかけて協力してもらいました」。
楽曲のアレンジを担当したマルチアーティストのWiz_nicc氏をはじめ、錚々たるクリエイターたちが集結。さらにイラストは新進気鋭のイラストレーター・萩森じあ氏が手掛け、透明感のある映像に仕上がった。
「『雨上がり、快晴の空』は、10年くらい前、ギター弾き語りを始めて間もない時期から歌っている楽曲です。当時、大学へ行く前に、コンビニでアルバイトをしていました。ある日、行きは大雨だったんですけど、バイトが終わって帰るころには晴れていた。その空を見ていたら、急にメロディが浮かんできたんです。長年歌っている代表曲だからこそ、恥ずかしくないMVを作りたくて、みんなの力を借りました」。
音楽を通じて人の輪を広げ、作品の質も高まっていく。
「つながりこそが、ボクらの武器。」とは、とある映画のキャッチコピーだが、彼の話を聞いていると、まさにそのフレーズを使いたくなった。
次はどんな作品を届けてくれるのか、楽しみだ。
歌詞や音作りへのこだわり
ソロやバンドとして作ってきた楽曲の総数は300を超える、と語る犬塚。
「メロディが先でも、歌詞が先でも、どんなパターンでも作れます。一番アイディアが思い浮かぶのは、入浴中などのリラックスタイムですね」。
現在は、自らDTMを駆使して、アレンジまで全て一人で行っている。
「自分に無いものを、どんどん取り入れていきたくて、最近はラップに挑戦しています。犬塚モブとしての最高を更新していって、いつか『何をやってもモブの歌』という状態になれば、僕の勝ちかなって」。
これまでの経験を踏まえつつ、新しい音楽をやりたいと考えている。
「今までは、誰かのために歌っていました。でも、昔と同じことをやっても、意味がありません。曲調や基盤は同じでも、マインドセットを変えることにしました」。
自分の奏でたわがままが、誰かの幸せや喜びになったら最高だ、と考えた。
とはいえ歌詞を書くときは、自分が言いたいことを伝えるだけでなく、聴き手の共感を得られるように心がけている。
「時代に合わせて、ダークな歌詞を入れることも増えました。100%明るい、太陽のような希望より、絶望的な闇のなかで微かな光に手を伸ばす、という方がエモいかなと」。
音作りにもこだわっている。
「不協和音からの誠実な音、ってのが芸術だと思ってます。僕が思う『良い音』は、ちょっと物騒な表現ですが、『心臓にメスを刺す音』です。ざっくり言うと、僕の音を聴いて、生まれ変わってほしいんですよ。自分の音楽が、誰かの居場所になったら嬉しいです」。
人生に悩んだときは、ぜひ彼の楽曲を聴いてみてほしい。
text:momiji