【SSW28:STORY】大阪城ホールでのワンマンライブを夢見て・前田琴音

ハイトーンパワフルボイスが特徴のギター弾き語りシンガーソングライター、前田琴音(まえだ・ことね)。大阪城ホールのステージに立つことを目標にして活動してきた彼女は今、2025年11月9日に大阪城音楽堂で行うワンマンライブに向けて、1000枚のチケットの販売に挑戦している。「夢は、諦めなければ絶対叶う」と語る彼女が走ってきた道のりとは。

タレントに憧れた幼少期

大阪府出身の前田は、目立ちたがり屋の少女だった。

「幼稚園のころの夢は、お笑い芸人になることでした。『漫画家になりたい』と言っていた時期もあります。有名になりたい、表に立つ仕事がしたいと思っていました」

小学校5年生の時、たまたま見たテレビ番組で、出演者の姿に心を奪われた。

「タレントのベッキーさんが、アップで映っていたんです。彼女の笑顔を見て、『この人みたいになりたい!』と感じました」

 

中学校では吹奏楽部に所属し、アルトサックスを担当。卒業後は「タレントになる」という夢を叶えるために、大阪府立咲くやこの花高等学校演劇科へ進学した。

「踊って、歌って、演技して、脚本も自分たちで作って、オリジナルの演目をやっていました。あのころ学んだことは、今の活動にも生かされている気がします」

演劇に打ち込む一方で、漫才にも取り組んだ。吉本興業が主催する「高校生お笑いNo.1」を決めるイベント・ハイスクールマンザイに出場し、準決勝まで進出した。

「漫才は楽しかったんですけど、好きすぎてダメでした。お笑い芸人さんにお会いしても、先輩として見られないというか。『仕事にはできないな』と思って辞めました」

高校卒業後は、役者を続けながら、友人とともにYouTubeチャンネルを開設した。

「あのころは希望に満ち溢れていました。『アルバイトで生活しつつ、オーディションをたくさん受けて、色々がんばっていれば、どこかで成功するはず!』と考えていました」

YouTuberとしての活動の滑り出しは順調だった。

「投稿を始めて3本目の動画が、25万回再生くらいバズったんです。TWICEの楽曲を使った、ドッキリみたいな企画でした。でも、しばらくしてチャンネルの伸びが落ち着いてきて、相方が韓国へダンス留学することになりました。私はそこまで向こうの文化に詳しくなかったので、付いていくのは断りました」

気づけば、20歳の誕生日を迎えるまで、あと半年ほどに迫っていた。

「何かやり残したことはないかな、と考えた時に、路上ライブがやってみたくなりました」

お誂え向けに、彼女の実家の屋根裏部屋には、バンドをしている叔父が置いていったアコースティックギターがあった。

「インターネットで『ギター 弾き方』とか調べて、一人で練習しました。もともと、友達とカラオケに行くのは好きだったし、役者時代に発声練習をしたり、歌唱の授業を受けたりもしていました」

今の自分に必要なのは音楽だ

前田が初めて大阪府内の路上で歌ったのは、2018年6月だった。

「正直なところ、最初の路上ライブの日のことは、あまり覚えていません。写真を見返しても、実感がわかないんです。きっと、いっぱいいっぱいだったんでしょうね。歌った曲は、あいみょんさんの『君はロックを聴かない』だったかな」

 

6月13日には、友人の紹介で、ライブバーに出演した。

「その時点で『音楽はもういいかな』という気持ちでした。路上をやって、ライブにも出て、『人前で歌うのは、あんまり好きじゃないな』って。ただ、友達が『ユニットをやろう』と誘ってくれたので、せっかくだからと引き受けました」

しかし、ユニットとして一ヶ月ほど活動したところで、相方が音楽を辞めてしまった。

「10本くらいライブが決まっていたのに、『琴音だけで出演してほしい』と言われてしまったんです。『楽器も弾けないのにどうしよう』ってなりました。最初のライブで知り合った方が、サポートでギターを弾いてくださることになって、助かりました」

ライブ会場を回り、頭を下げつつ歌う日々のなかで、サポートメンバーから「自分で曲を作ってギターを弾けるようになった方がいい」とアドバイスを受けた。

「私は、そこまで本気で音楽がしたいわけじゃありませんでした。『それでも今は、やらなあかん時だから』とサポートの方に言われて、『ええー』っと思いました。だけど仕方ないので、ギターと向き合って、『スベテ』という曲を作りました。幸い、お客さんには好評で、初期のライブでは必ず歌う曲になりました」

こうして彼女は、半ば強制的に、必要に迫られるようにして、シンガーソングライターの道へ踏み出した。

「やらざるを得ない状況で、がむしゃらに音楽活動をしているうちに『これは私に合っているかも』と感じるようになりました。今となっては、急にユニットを辞めた相方に感謝しています。彼女のおかげで、この道に進むことができたので」

ユニット時代の相方が残したライブ日程を全て消化するころには、「1年は続けてみよう」という気持ちになっていた。

「もしファンが増えなかったり、『ずっと音楽を続けたい』と思えなかったりしたら、辞めよう。そうしたら、もう、表に出る仕事に就くこと自体を諦めるつもりでした。『保育士になるために、大学へ行って勉強しようかな』とも考えていました」

タレントになることを志してから約10年。努力しても結果が出ない日々に、見切りをつけかけていた。

転機が訪れたのは、2019年1月だった。大阪城ホールで開催された『ベリーグッドマン“てっぺんとるぞ2019”〜超好感男は大阪城へ〜』を観て、心が動いた。

「ベリーグッドマンさんのことはよく知らなかったんですけど、妹が誘ってくれて、母がチケットを譲ってくれたんです。とても素晴らしいライブで、感動しました。あとで調べたら、彼らはずっと『大阪城ホールでワンマンライブすることが夢だ』と公言していたんですよね。それを知った瞬間に、あの時の会場を包んでいた一体感の意味が分かりました」

その光景は、前田の心に焼きついた。

「私も、彼らのようになりたい。アーティストとお客さんが一つになって、夢を叶えるっていう景色を作りたいと思いました」

大阪城ホールでのワンマンライブを目標に活動するシンガーソングライター、前田琴音が誕生した瞬間だった。

コロナ禍に挫かれながらも、走り続けた7年間

2019年1月29日、心斎橋FootRock&BEERSにて初の主催ライブを行った前田は、同日に1stシングル『ヘソで沸かしたコーヒーを』を発売。さらに6月12日、京橋セブンデイズにて1st ワンマンライブを開催し、満員御礼となった。

「ひたすら練習して、曲を書いて、たくさんライブをしました」

20年2月12日には、阿倍野ROCKTOWNにて『2ndワンマンライブ&2ndシングル「fearless heart」リリースイベント「大阪城ホールへの道〜200人集めちゃいました〜」』を開催。

「このタイトルでワンマンを続けていって、最後に『大阪城ホールへの道 ~1万6000人集めちゃいました~』をやろうと決めたんです」

ライブ当日、会場には、タイトルに掲げた人数以上の観客が集まった。

「約270人の方が来て下さって、ライブハウスの扉が閉まらないくらい盛況でした。『やっとチャンスが来た!』と思いました。『これ、私、売れるわ!』って」

 

しかし、それからほどなくして、コロナ禍が本格化。緊急事態宣言が発令され、外出することさえ憚られる日々が始まった。

「すごく落ち込みました。『あのワンマンはなんやったんや』って。でも『ここで止めたらダメだ』と思って、家でツイキャス配信をしたり、曲を作ったりしました。自分から音楽を切り離さないように必死でした」

各地のライブハウスが配信設備を整え始めると、積極的に出演した。

「呼んでもらったら、とにかく行って、毎日のように配信ライブに出ていました。私はずっと『止めたら終わる』と思ってて、実際、音楽を辞めていった仲間もたくさんいます。一方で、あの時期に出会えた人達もいて、今もご縁が続いています。コロナ禍は最悪の思い出だし、恨みは一生消えませんが、だからこそ得られたものもありました」

LIVE HOUSEバナナホールで21年1月23日に開催予定だった『3rdワンマンライブ「大阪城ホールへの道〜500人集めたかったけど大人の事情で100人集めちゃいました〜」』は、緊急事態宣言などの影響で二度の延期を余儀なくされたが、6月30日に無事開催できた。

「まだまだ『ライブは悪だ』みたいな風潮でした。それでもライブしている人がいて、カッコよくて、私も続きたいと思いました。自腹を切って感染対策をするなどして、来場は150名、配信と合わせると230名に音楽を届けることができました

7月からは『大阪城ホールへの道 〜武者修行ツアー〜』を開始。東京、名古屋、福岡、北海道などのライブハウスを回り、21年12月19日には、心斎橋 歌う魚にて『ツアーファイナル弾き語りワンマンライブ』を行った。

「初めて大阪以外のライブハウスにたくさん出て、得難い経験をできました。ただ、まだ情勢が厳しくて、出演できなかったお店もあり、悔しさが残りました」

22年4月20日、1st digital single『どんな答えも正解なんだ』をリリース。11月10日には、心斎橋BIGCATにて3回目の『大阪城ホールへの道』を開催し、当時の会場収容人数の上限となる350名を集めた。

 

23年5月21日には、1st full album『YOUR COLER MUSIC』を発売。翌月から、アーティスト仲間とともに『出来立てホヤホヤアルバム手渡しツアー』を敢行した。

「北海道から沖縄まで行って、前のツアーで出演できなかったお店にも出て、リベンジすることができました」

10月20日に、Music club JANUSでツアーファイナルワンマンライブを開催。その場で「次は大阪城音楽堂でやりたい」と宣言した。

「本当に大阪城ホールを目指すなら、越えなければならない壁だと思っていました。皆さんに『来年か、再来年になるか分からないけど、次は音楽堂です。それまで大きなワンマンはやらないので、待っていてください』とお伝えしました」

大阪城音楽堂でのワンマンを成功させ、大阪城ホールの夢へ繋げたい

24年上半期は、楽曲制作に取り組みながら、ライブハウスへの定期的な出演を重ねた。

「やっぱり、何かに挑戦していないと頑張れないな、と感じました。普通に音楽活動をしているだけじゃ物足りない。怠けてる感じがしちゃう。そんなことないんですけど」

24年6月22日、心斎橋 歌う魚にて、活動開始六周年を記念する昼夜ワンマンライブを開催。3か月後の9月22日までに「1st full albumを500枚売る」という挑戦を開始した。

「毎日のように路上やライブハウスで演奏しました。でも、8月頭の時点で150枚くらいしか売れていなくて、『このままじゃ無理や』ってなりました」

懇意にしているライブハウスのスタッフへ相談すると、「大阪から出ないと無理やと思う」とアドバイスされた。

「次の日に、三宮で路上ライブをしました。とりあえず近いところから、行けるところから行こう、と。そしたら、すごくCDが売れたんです。それから明石とか、岡山とか、名古屋とか、あちこちで『売れるまで終われへん』っていう路上ライブをしました。その甲斐あって、9月19日に500枚を達成することができました

9月22日には、心斎橋 slow birdにて『CD500枚お届け大感謝祭』を開催。CDを持参するとチケット代無料という試みを行い、観客に360度を囲まれた状態で、生音で歌った。

「路上で出会った人たちや、『ライブハウスには行ったことない』って人が、たくさん来てくれました。その後、他のライブにも来てくださるようになって、ありがたかったです」

手ごたえを感じていた時、Live&kitchen【歌う魚】の店長から「今なら音楽堂行けると思うで」と声をかけられた。

「私としては『もう少し先じゃないか』と思っていましたが、ぐっと背中を押してくださいました。様々な手続きや、ライブの制作も手伝ってくださり、とても感謝しています」

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24年12月6日、大阪城音楽堂での弾き語りワンマンライブ『大阪城ホールへの道 ~1000人集めちゃいました~』を、翌年11月9日に開催することを発表。

「大阪城音楽堂でのワンマンの日は、私にとって26歳最後の日です。夢を諦めていく若い子とか、おじさんとかおばさんとかいるけど『何歳でも、夢があるなら諦めなさんな』っていうことを、自分の背中で見せたいです」

25年1月12日からチケットの販売を開始。現在は大阪府内の路上やライブハウスを中心に、全国へ足を運び、毎日のように歌っている。より多くの人に自分を知ってもらうため、新しいYouTubeチャンネルを開設し、TikTokにも動画を投稿中だ。

「私は凄い才能があるわけじゃないし、コネもないし、最強の美貌もありません。ただ、頑張っているだけ。真っすぐ走り続けているだけです。何も特別なことじゃない。だからこそ、この挑戦をやり遂げて、みんなに『琴音ちゃんにできるなら、私にもできる』って思ってほしいです」

彼女は「私から見る1000人と、1000人から見る私は、違うようで同じはずだ」と語る。

「この挑戦を達成した時、私だけが嬉しくなるわけじゃないと思うんです。集まってくれたみんなも『ほんまに、こんな景色が見られるんや。頑張り続けたら夢って叶うんや』と思ってくれると、私は信じています」

誰かの背中を押すまではいかなくとも、隣を一緒に歩けるアーティストでありたい。夢に向けて走っていく同志でありたい、と願っている。

11月9日はギター一本、弾き語りでの演奏を披露する予定だ。

「普段のワンマンはバンド編成でやっていますが、今回は、この方が潔いんじゃないかなと。私の周りには、これまで弾き語りで1000人集めた人がいませんし」

5年後、10年後は、どんな自分になっていたいですか?と聞いてみた。

「まずはこれから2、3年のうちに、30歳までに大阪城ホールでのワンマンライブを達成したいです。『夢は、諦めなければ絶対叶う』と証明したい。そのためにも11月9日の音楽堂が第一歩です。大阪城ホールへ辿り着いた先のことは、まだ決めていません」

彼女の挑戦がどんな形に結実するのか、楽しみだ。

文:紅葉

 

INFORMATION

IMG_1917-shielded-robust-1-737x1024 【SSW28:STORY】大阪城ホールでのワンマンライブを夢見て・前田琴音

 

2025.11.09(日) 開場 14:00 / 開演 15:00
『大阪城ホールへの道 ~1000人集めちゃいました~』

[会場] 大阪城音楽堂(大阪市中央区大阪城3-11
[料金] 3,000円
[詳細 / 購入] https://ktnsmire.thebase.in/items/99557039

 

公式サイトおよびライブ会場にて、CD・グッズ販売中!

1stAL_500x500 【SSW28:STORY】大阪城ホールでのワンマンライブを夢見て・前田琴音

1st full album『YOUR COLER MUSIC』

2023年5月21日発売。全12曲、¥3,000(税込)。

2ndCD_500x500 【SSW28:STORY】大阪城ホールでのワンマンライブを夢見て・前田琴音

2nd Single『fearless heart』

2020年2月12日発売。全3曲、¥1,000(税込)。

towl_500-1 【SSW28:STORY】大阪城ホールでのワンマンライブを夢見て・前田琴音

歌い続けろ!リリックタオル!

前田琴音の楽曲がそのまま絵になりました!¥2,000(税込)。

◎前田琴音公式サイト

https://aboutme.style/ktnsmire